【旧車とは思えない!】
映画007(You Only Live Twice)でオープンのボンドカーとして登場した車のベースカーだ。キャブレター特有の直6サウンドがとても心地良い。さらに、動画を見てお分かりだと思うが、とっても軽快に走ってくれるので非常に楽しい。しかし、それとは裏腹にドライビングは難しい。とにかく、前後輪ともに路面への接地感が乏しいのだ。実際にドライビングしてみると、グリップ力が弱いことに気がつく。一概にタイヤの問題だ、ということではないだろう。当時の車両設計における車体剛性や足回りのジオメトリーの問題なのかもしれない。このフロントの低いグリップ力は、アンダーステアを誘発し、またリアの場合にはちょっとした挙動変化に車が順応できずにブレイクしてしまう。従って、両方のステア特性が接地感と乏しさと共に顔を出すので、これがドライビングをとても難しくしている原因となっているのだ。
しかし、Nordschleifeを攻め続けているうちに、この車に特有のドライビングを見出した。直線部分でフルブレーキングしてブレーキを残しつつターンインするのがセオリーであるが、直ぐにステアリングを切るのではなく、ブレーキを残したままでしばらく直進させる“間”が、舵を入れる前に必要なのだ。そうすると、不思議なことに前後輪ともにしっかりと路面にグリップするようになり、比較的安心してコーナリングしてくれる。
現代の車とは異なり、十分な荷重移動に少し時間を要するようだ。これを会得すると、水を得た魚のようにとても軽快に走ってくれる。旧車とは思えないほどの走りっぷりだ。