0018: Dino 246 GT [194 ps] at 8’21.610

【その気にさせる!】

1970年代を代表するV6 2.4L 横置きエンジンのコンパクトMRだ。ステアリングはとても重いが、エンジンは非常に軽快である。高回転域までキャブ車ならではの官能的なエンジン音と共にストレスなく回るこの様は、現代でも十分に通用するフィーリングである。

そして、この車の最大の特徴はハンドリングだ。とてもダイレクトに反応してくれるのだが、リアがとてもナーバスだ。ちょっとでも油断をすると、直ぐにテールスライドを誘発して、とても怖い思いをする。例えば高速コーナーであるSchwedenkreuzでは、リアが外へ高速で流れ出してしまい、極度の緊張感に襲われた。この解決策は、コーナー進入時のターンインで全てが決まると言って良いだろう。ブレーキングをしながらのコーナー進入は厳禁だ。そうでなくても、急激なステアリング操作をするとリアはブレイクしてしまう。肝心なのは、繊細なアクセルワークとステアリング操作との高度に調和されたターンインへのアプローチだ。ここが全てであり、この車のドライビングにおける最も高揚する場面となる。右足のアクセルペダルは、舵の入れ具合とともに繊細にきめ細やかに、リアタイヤの限界付近を探りながら開閉させる。

このコーナリングを一旦得ると、速いだけではなく楽しくてたまらなくなる。実際、Wippermannを過ぎた辺りからgoalまで、多少リアを滑らせながらもとても元気良く走っている姿が分かるだろう。その気にさせる一台だ。

0017: BMW i3 [170 ps] at 9’31.603

【普段使い,ベストバイ】

電気自動車がこのNordschleifeでどのようなパフォーマンスを発揮するのが、興味が尽きないところだ。音が静かなのは言うまでもないが、とにかく運転が楽である。それはATだからという理由だけではなく、高速域においてもステア特性は極めてニュートラルなのだ。なので、ドライビングはとても自然で安心感が満点である。強いて言えば、コーナリング中に不用意にアクセルをONにすると、プッシュアンダーステアが明確に現れる。その挙動は、モーターのトルク特性に変動が少ないためであるのか、アクセル開度に正確に比例して現れ、これもまた極めて自然な動きだ。

とにかく、これ程までに安定しているのは、重心がとても低いためであるように思われる。恐らく一番の重量物であるバッテリーが、低い位置に搭載しているためではないだろうか。また、高い剛性を有していることが高い安定性に大きく寄与しているようにも思われれる。カーボンモノコックが使用されているとのことだが、単に剛性が高いだけではなく、軽量でもあることの相乗効果の現れだろう。

Nordschleifeを走られてみての不満点をあえて挙げれば、直ぐにこの車の最高速度に達してしまうことだ。モーターの持つトルク特性から、知らぬ間に140Km/hに達してしまうのだ。普段使いの車としては、ベストバイだろう。

0016: Mimi Cooper S [170 ps] at 8’40.796

【もはやドイツ車】

今となってはドイツ車と言っていいのだろうか。その走りは、しっかり感を全身で感じられる。FF特有のアンダーステア特性は常に有している。それは、フロンタイヤへの非常に大きな負荷を意味しているのだろう。ブレーキングでしっかりとフロント荷重を与えてコーナーを駆け抜けようとしたところで、フロントタイヤの負担が増えるだけで、鋭い旋回へは移行できない。

そこで、車載映像を見るとお分かりになると思うが、ステアリングはゆっくりと丁寧に操作する必要がある。すると、アンダーステアを完全に消し去ることはできないが、しっかりとこの車は応えようとしてくれる。ここに、この車の剛性感を感じるのである。

それだけではなく、非常に感心したのは、フルブレーキングを終えてフロント荷重が最大になったときに、FF車にありがちなリア荷重がすっかり抜けてブレイクしてしまうことが一切無いのだ。この安心感は絶大であり、ここにMini一番の剛性感を感じられるのだ。実際に、単純な私の不注意でオーバースピードでBreidscheidに進入してしまったのだが、フルブレーキングをしつつ、何とか壁への激突を回避してラインを大きくはずしてしただけで済んだその時でさえ、荷重変動が大きく安定性を大きく欠いて挙動を乱しやすい場面においても、姿勢を取り乱すことは一切無かった。これはもはや、ドイツ車なのだろう。

0015: Honda Beat [64 ps] at 10’15.261

【エンジン,まわる~】

とても小さなミッドシップスポーツだ。その心臓部であるエンジンは、高回転までストレスなく回ってくれるため、とても気持ちが良い。逆に回り過ぎてしまうので、Döttinger Höhe などの高速直線区間では、5速MTでは直ぐに吹け気ってしまう。その点で回転フィールには文句は無いのだが、やはりエンジンパワーはそれなりだ。例えば代表的な上り区間であるKesselchenでは、アクセル全開でもどうにもならず次第に失速していくので、5速から4速へのシフトダウンを余儀なくされる。

一方で運動性能は、ハンドリングに問題は無いのだが、リアがあっけなくブレイクしてしまう。特にコーナー進入時には、とても神経質になる必要がある。ブレーキを引きずらずに進入を試みるのだが、やはり怖さはついてまわる。この解決には、アクセルをパーシャルからややON気味にアプローチすると、リアのグリップ感が増して多少の安定性向上が図られる。とは言うものの、速度はたかが知れているので、大きく踏み外すことは無いだろう。

この点を生かせば、Nordschleifeの攻略に向けた走行ラインの確認をするなどにとっては、とってもオススメといえる一台だ。

0014: Toyota 2000GT [156 ps] at 8’40.200

【旧車とは思えない!】

映画007(You Only Live Twice)でオープンのボンドカーとして登場した車のベースカーだ。キャブレター特有の直6サウンドがとても心地良い。さらに、動画を見てお分かりだと思うが、とっても軽快に走ってくれるので非常に楽しい。しかし、それとは裏腹にドライビングは難しい。とにかく、前後輪ともに路面への接地感が乏しいのだ。実際にドライビングしてみると、グリップ力が弱いことに気がつく。一概にタイヤの問題だ、ということではないだろう。当時の車両設計における車体剛性や足回りのジオメトリーの問題なのかもしれない。このフロントの低いグリップ力は、アンダーステアを誘発し、またリアの場合にはちょっとした挙動変化に車が順応できずにブレイクしてしまう。従って、両方のステア特性が接地感と乏しさと共に顔を出すので、これがドライビングをとても難しくしている原因となっているのだ。

しかし、Nordschleifeを攻め続けているうちに、この車に特有のドライビングを見出した。直線部分でフルブレーキングしてブレーキを残しつつターンインするのがセオリーであるが、直ぐにステアリングを切るのではなく、ブレーキを残したままでしばらく直進させる“間”が、舵を入れる前に必要なのだ。そうすると、不思議なことに前後輪ともにしっかりと路面にグリップするようになり、比較的安心してコーナリングしてくれる。

現代の車とは異なり、十分な荷重移動に少し時間を要するようだ。これを会得すると、水を得た魚のようにとても軽快に走ってくれる。旧車とは思えないほどの走りっぷりだ。

0013: RCZ GT Line [155 ps] at 8’48.193

【スキール音と共に】

流麗なボディーデザインが特徴のFFスポーツだ。基本的にはフロントの車重が大きく、アンダーステア傾向である。従ってコーナリングのはじめは、意識的に曲げるようなドライビングになる。具体的には、コーナー進入の直前にはしっかりとフロントに荷重をかけて、ステアリングの切り始めと共にリリースするブレーキペダルの量を精密にコントロールすることで、舵の効き方が反応してくれる。ここのブレーキワークとステアリングとの調和が腕の見せ所であり、この車の面白いところだ。

しかしこのときに気を付けねばならないことは、コーナー進入直前のフルブレーキング時である。ステアリングをしっかりと戻した直進状態でのフルブレーキングが必須だ。さもななければ、強烈な前荷重が掛かるとフロントヘビーであることとが重なり、リア荷重がかなり抜ける状態になることから、直ぐにリアが破綻してしまい左右のどちらかに簡単に流されてしまうのだ。その辺りは、全開走行を重ねることで直ぐに会得できるレベルだ。

この車両の場合、エンジンは全回転域で吹け上がりが今ひとつであった。オンボード映像にあるブースト計を見ると、過給が殆ど掛かっていないようだ。縁石を一杯に使って、なるべく速いコーナリング速度を維持させながらスキール音と共に駆け抜けるのが、この車の姿であろう。

0012: Honda S600 [tuned 150 ps] at 9’55.255

【何とも言えない征服感】

ノーマルの運動性能が余りに心地良かったので、エンジン出力を上げたチューンを施してみた。これと同時にサスペンションの減衰力を上げて、車高も少し下げるというような簡単なセットアップでトライしてみた。やはりエンジンはとても良い。何のストレスもなく吹き上がってくれる。

問題はコーナリング性能だ。ノーマルのときには、ミッドシップレイアウトの素直なコーナリングとこの車の特徴であるリアの安心感が調和して、軽快感が抜群だったのだが、なんともシビアなステア特性になってしまった。リアが直ぐに破綻してしまうのだ。これが恐怖感につながり、コーナー進入前に十分に減速して、少し間を置いてからステアリングを入れるような慎重さを要することになった。恐る恐る舵を入れる様子が、オンボード映像で確認できるだろうか。従って、ブレーキを残しながらの前荷重を維持したままコーナーへの進入は、厳禁である。このことは、サスペンションがエンジン出力に対して柔らかく、減衰力を高めた程度では対応ができなくなってしまったことを意味する。

難所のWippermannからBrünnchenにかけては、ピクピクしながら何とか姿勢をコントロールしている姿を確認できるだろう。一言でいえば、シャーシ性能がエンジン出力に負けてしまったのだ。しかしラップタイムを見れば、この種の車としては非常に速いことは一目瞭然だ。ハイパワーな心臓にミッドシップレイアウトを備えたコンパクトボディーは、全てを手中に収めた「なんとも言えない征服感」に満たされるのだ。

0011: Alpine A110 1600S [140 ps] at 8’45.670

【とってもスリリング】

エンジンがとてもいい。車両の軽量さと相まって、パワー感とトルク感がアクセルペダルの開度と綺麗に比例して何のストレスも感じさせないので、違和感なく爽快に走れるハズだった。

ここで唯一苦労させられたのは、リアの挙動のシビアさだった。とにかくコーナー入り口のところでリアが外に流れ出し始め、それを抑えようとカウンターを与えるのだが、RRである為なのか一旦滑り出したらもう止まらない。コーナーリングどころではないのだ。だから、直線部分でしっかりとブレーキングを完了して、ゆっくりと舵を入れる。それでも非常に厳しく、簡単にオーバーステアを誘発してしまう。

唯一の解決法は、早めのカウンターを身構えていることと、アクセルONでリアに駆動を与えつつ旋回することだと思う。すると、どうにかして思っているラインをトレースしてくれる。サスペンションのセッティングを詰めていけば、エンジンが非常に良いだけに、現代でも十分に通用するスリリングなドライビングカーとなるだろう。

0010: ABARTH 500 [135 ps] at 9’06.712

FFを教えてくれる】

ショートホイールベースならではのキビキビした走りが特徴だ。しかしFF車ならではの筋の通ったアンダーステア傾向をしっかりと持っている。そして、この車はその解決法を教えてくれるのだ。その肝は、フルブレーキングからのブレーキペダルのリリースの仕方として全てが集約される。

それは、きっちりとフロント荷重を与えることから話しが始まる。そこでステアリングを切っていっても何もおきない。その瞬間、少しずつブレーキペダルを緩めて行ってはどうか。それに比例して、綺麗にゼブラゾーンをトレースするではないか。このリリースとコーナリングとの調和を感じたら、爽快感間違いなしだ。また、このリリースを遅らせて、ブレーキを引きずり気味に長く保持していれば、オーバーステアを比較的容易に誘発できる。

億劫な私は、ついついリリースを遅らせ気味して、オーバーステア気味にコーナリングを済ませてまっている様子が、あちらこちらで垣間見れるだろう。一方で、タイトな長いコーナーが苦手なのも事実だ。Klostertalkurveでは、正確なラインをトレースできたものの、スキール音を立てながら、苦しいながらも頑張っている様子が見て取れるだろうか。

FF車の乗り方を教えてくれる一台だ。

0009: TOYOTA S-FR [135 ps] at 8’57.321

小さな巨人】

待望のコンパクトFRだ。なんとも愛嬌のあるフェイスで、セカンドカーにはどうかとついつい誘惑されてしまいそうだ。軽量でどんなにやんちゃな走りを披露してくれるのか期待してドライブすると、そのジェントルさに驚かされる。シビアな挙動とは全く無縁で、どんな状況でも安心してアクセルを踏み込んでいける絶対的な安心感がある。きっと、しっかりとしたシャーシ性能が発揮されているのだろう。

特にリアの安定感は特筆に価する。コーナリング中のラフなブレーキやアクセル操作によっても、唐突な挙動の乱れは全く起こさずにどっしりと構えているのだ。リアが破綻することなど皆無といってよい。例えば、Karussellではオーバースピードで進入してしまったためにラインをはずしてしまったが、そこは通常スリッピーで挙動が大きく乱されるものだが、何食わぬ顔をしてやり過ごしたのだ。この安心感には脱帽した。

同じようなことが、盛大にアウト側へはみ出したSchwalbenschwanzについてもいえる。こんな小さな巨人が、発売中止になってしまったことがとても残念だ。